本作は、英国が誇るプログレッシヴ・ロック・バンド、ピンク・フロイドが1979年に発表したCD2枚組アルバム。人間の前に立ちはだかる壁についてのコンセプトを具現化した作品。ロック・オペラ的な展開と社会風刺的な内容で世界中の注目を集めた1枚。 (C)RS

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『The Wall』は、たくさんの曲の寄せ集めとしてではなく、全体でひとつとなる作品として聴くべきだろう。しかし、そこに不満があるともいえる。ストーリーに雑多な音楽をまとめ上げるほどの首尾一貫性がないのだ。とはいえ、ときおり見せるひらめきには、ピンク・フロイド最大の野心作と呼ばれるにふさわしいものがある。ひらめきを放つ曲のほとんどは、実によく計算してつくられており、いまや正真正銘の名曲となっている。「Hey You」、「Mother」、そしてとりわけ「Comfortably Numb」は繊細な驚くべき曲だ。複雑な音楽ではあるが、ピンク・フロイドはゆったりとしたペースで進行させており、リスナーにじっくりと聴きこむ余裕を与えている。こういうペースを取るところにピンク・フロイドの美質があったのだ。また、「Another Brick in the Wall/The Happiest Days of Our Lives」も注目に値する。ラジオのロック番組では定番となっている曲だ。(Genevieve Williams, Amazon.com)